19年度

第1回アパレル問題研究会-ディスカッション

事例1 コーティングの剥離 
事例2 エリ周りの変色
事例3 リップル加工部分の変色
事例4 部分的な白化
事例5 プリントの色泣き

事例1 コーティングの剥離

事例データ
商品 メンズコート
苦情内容 ドライクリーニングしたらエリ部分のコーティング膜が剥離した。
組成表示 表地:合成皮革
中綿:ポリエステル100%
裏地:ポリエステル100%
取扱い絵表示
<クリーニング店へのお願い>
この商品は溶剤が残留しやすいため、充分に乾燥を行って、残州がないことを確認した上でお客様へお渡し下さい。
苦情品の外観 エリ山部分及び裾端線、袖口にコーティングの剥離が発生し、基布が見えている。
関連する試験データ ジャングルテスト(人工汗液使用)
検討内容
  • 1.何故この現象が起こるのか?
  • 1)経時劣化(加水分解等)
  • 2)摩擦
    着用・バッグ・クリーニング
  • 3)汗・皮脂(脂肪酸)による分解
  • 4)NOXガス
  • 5)紫外線等
  • 使用されるポリオールの種類などによって上記の劣化原因に対する耐性は大きく違い、また着用・保管条件によっても問題発生までの期間が大きく異なる。
    本品の場合、製品が比較的新しく、問題が発生している部分以外のコーティングにはベタつきなどの劣化は発生していないこと、着用時によく摩擦を受ける部分に発生していることを考えると、耐摩擦性が充分でないポリオールを使用しているか、コーティング時に何らかの不具合があった可能性がある。
     また、エリ山部分は、皮脂の分泌が多い首筋に接触する部分であることから、皮脂に含まれるオレイン酸などの脂肪酸によりポリウレタン樹脂が分解されているところに着用摩擦が加わったため、著しい剥離が生じたと推測される。
  • 2.判断基準と試験方法
  • 摩擦や揉みなど物理的な外力にに対する試験とジャングルテストとを組み合わせて試験
     商業ドライクリーニング、水洗い試験
  • *いわゆる生地試験は、あくまでも限定された条件下における「基準」を求めるものであり、実際の着用時には、様々な劣化要因が複合して作用することを考え、現実に即した試験方法の確立が望まれる。
  • 3.商品を企画・生産・販売する場合の注意事項
  •  コートやジャケットとなどの「外衣」は着用時に身体や鞄、その他のもの等との摩擦を継続的に受けるという条件を考え、目的に応じたポリオールを選択する。
     ポリウレタンの性質や注意事項を販売時の説明や取扱注意表示、下げ札などで確実に消費者に理解してもらう。特に、必ず寿命を迎え剥離などが発生することを理解してもらう。
  • 4.クリーニング時の注意
  • 受付時に「ポリウレタン素材は劣化し、やがて剥離すること、クリーニング後にその現象が発生する可能性があること」などを説明し、了解してもらった場合のみ受付・処理を行うよう徹底すること。
     ドライクリーニングの場合、パークなどKB値の高い溶剤は避けて石油系ドライクリーニングを行い、溶剤の残留が無いよう、完全に乾燥してから納品すること(化学ヤケド防止)。
    可能なものは水洗いする。

  エリ山部分のコーティング剥離

   裾端線

   袖口

   肩部分

掲載の検討結果は、あくまで課題試料の観察及び事故状況の推定に基づいて検討した結果の一つであり、試験や分析から導いたものではありませんので事実と異なることがあります。ご了承ください。