21年度

平成21年度 品質と技術に関する講演会 (平成21年度最終行事)

日 時 平成22年4月17日(土)13:30~17:00
会 場 福井県工業技術センター 本館 大講義室
内 容 講演1. 「ファッション衣料のエコロジー品質を問う」
    品質情報研究所  所長  住連木(しめのき)まさし 氏
講演2. 「ポリウレタン繊維」~製造、物性、耐久性~
    元(株)ワコール、元 旭化成㈱  秋山 真輝生 氏
報告1. 「2月27日繊維製品品質研究会(苦情事例研究会)総括」
    (財)QTEC 福井試験センター 参事 大木信雄 氏 (TES会事務局)
参加者 52名

講演会要約

住連木氏からは、最近 講演で訪れた韓国や中国の衣料品クリーニング事情について触れられた後、①ドライクリーニングの起源、②産業革命やファッション衣料の歴史とクリーニング産業、特にドライクリーニングの発展との関係(特に 親水性の素材からポリエステルに代表される新油性素材の拡大とドライクリーニングの発展)、③多様な素材に対応する為「Textile Care Specialists(テキスタイル ケア スペシアリスト)」の育成が必要との認識から1988年クリーニング業者を対象とした「繊維商品めんてなんす研究会」を創設、活動していること、④経済の低迷から厳しいクリーニング業界、一方、ファストファッションの拡大と家庭洗濯需要が増えているなどの現状を話された。そして、今後は、エコロジー品質が求められるとして、(イ)素材として環境負荷の低いもの、(ロ)経時劣化への耐性が高いこと、(ハ)洗浄適性などリユース性の高いものという3つを上げられ、それらの具体例(事故事例など)を示された。具体例は、それぞれ (イ)ポリ乳酸繊維等、(ロ)合成樹脂や顔料バインダーの劣化・金属繊維の顔出し・綿の硫化染料S分残留劣化など、(ハ)溶剤中で可塑剤の溶出・ヒートセット不良品など。クリーニングに関して 新鮮な切り口での講演でした。

秋山氏からは、 ①ポリウレタン繊維の定義(ポリウレタン繊維とは?)、②ポリウレタン繊維の製造{(イ)ポリウレタン繊維の化学構造(ハードセグメントとソフトセグメント)、(ロ)製造技術の歴史的経緯と現状の製造プロセス、(ハ)ポリウレタン繊維製造の世界的な動向:旭化成の他、韓国・暁星の台頭、中国生産量の拡大など}、③ポリウレタン繊維の物性(天然ゴムとポリウレタン繊維の違い=ハード部水素結合のズレなど)、④ポリウレタン繊維の耐久性{(イ)ポリウレタン糸の構成:特に添加する安定剤に注目、(ロ)安定剤を壊す実例/ドライ溶剤への安定剤の溶出・劣化、日焼け止めなどに含まれる不飽和脂肪酸+UVによる酸化・劣化など}について お話し頂いた。更に、ポリウレタン糸を用いた編みたてやチーズ染色など加工技術上の課題や ポリウレタン糸を用いた最近話題の経編製品とその技術的な背景についても お話頂いた。まさに ポリウレタン繊維の基礎的な知見を 短い時間で とてもわかりやすく お話頂き、参加者には 大変 好評であった。

大木氏からは、 2月27日に行った苦情事例9点について、追加試験を含め、まとめの 報告がなされた。